2005年11月01日

審判から見た日米の野球の違い

前回に引き続き、田中俊幸氏の「プロ野球 審判だからわかること」より。前回、過度な引用やめますと言いましたけど、もうひとネタだけ。

個人的には、「日本の野球」と「アメリカのベースボール」は違うものと思っています。それゆえ、アメリカで通用しなかったのに日本では通用する選手がいたり、またその逆があったり、他国でのプレーを生かして成長したりってことがあるんじゃないかと思います。
その国内だけで行なわれるのならば、その国にあったルールでやればいいと思うのですが、WBCやオリンピックなど、異国間で争われる機会も増えてきました。その際には、独自のルールではなく、共通したものが必要となってきます。
それに対応するために、これまでの日本でのルール(についての解釈)を変えていっているのが、ここ最近の日本のプロ野球なんじゃないかと。


○ストライクゾーンの日米比較

メジャーリーグと日本のプロ野球のストライクゾーンが違っていると、ファンの方からご指摘を受ける。
確かに違う。日本では「ルールブック通り」が原則で、そのときどきで変化することはない。これに対し、メジャーではその年々の事情で、ストライクゾーンを変化させている。投手優位の時代はストライクゾーンを狭くとり、逆に打高になると、投手を助けるため広く取るのだ。
この違いは両国の国民意識の違いに根ざしていると思われる。
アメリカのファンは7〜8点を取り合う打撃戦を望んでいる。そこで、アンパイヤも試合がそうなるように、ストライク、ボールのジャッジを変える。年ごとに投手、打者の力関係は違うから、低めが厳しくなったり、外角が甘くなったりする。
しかし、日本の野球ファンはそれを許してくれない。
投球が外角のストライクゾーンに少しでもかかればストライク、1センチでもはずれればボールだ。つねにルール通りを要求される。したがって、審判も「ファンが納得してくれるように」野球規則通りのジャッジをする。
プロ野球がファン第一を考えるのは当然だが、日米ではファン最優先の考え方が「ファンが納得するジャッジ」か「ファンを楽しませるジャッジ」かで分かれるのだ

○ストライクゾーンは誰が決めるのか

ストライクゾーンとは「打者が打てる範囲」だ。これは日米ともにそうだ。
このストライクゾーンを日本では伝統的に、投手、打者と審判の三者で決めてきた
というと、「ルールを破るのか」と言われてしまいそうだが、「ルールの実際の運用にあたって、審判は投手と打者がともに納得するストライクゾーンでジャッジしてきた」ということだ。
たとえば、外角低めの投球に対し、審判がコールした「ストライク」のジャッジに、投手、捕手が満足するのは当然だが、打者も「しかたないか」と考える判定だ。投手、捕手が「しめた!」と思い、打者が「何で、あれがストライクなの?」と感じるジャッジではいけないのだ。
これは、日本の審判が選手第一に考えてきた結果で、こう言うと、審判は選手と癒着しているように思われるかもしれないが、日本の審判には、メジャー式の判定方法をよしとしない考えがあるのだ。
メジャーでは選手と審判はまったく別の組織に属している。審判は監督、選手から独立しているから、選手の考えに無関心でいられる。
たとえれば、アメリカでは、選手は裁判官のジャッジを待つだけの存在で、日本では法廷で裁判官に事実関係を説明し、情状酌量も求めることができる存在ということか。
もちろん、一度下された判定が覆ることはないが、監督、選手の抗議は審判団の中で検討され、その後のジャッジに生かされる。
このような考えから、03年からは高めのストライクゾーンが少し変更された。事情を説明すると、次のようになる。
審判はストライクをホームプレート上の空間で判定する。ところが、打者の打撃ポイントはホームプレートより前(投手寄り)にある。ストレートならほとんど変わりは無いが、上から落ちてくる変化球、カーブなどの場合、判定ゾーンでは「ストライク」になっても、打者の打撃ポイントでは高めの「ボール」となる。
これで、「ストライク」でも打てないという問題がでてきた。このため、監督会議での合意をへて、高めの変化球については考慮することになったのだ。

○メジャーの審判はうまいのか

メジャーの審判はうまいのだろうか。確かに、「これはうまい」と感心する人もいるが、「?」と感じる人も多い。審判のストライキで、人材に新陳代謝があった影響と思われる。
私は、10年ほどの経験を持つ日本の審判はメジャーのレベルより上と見ている。
こう断言できるのは審判の考え方の違いだ。
前述したように、日本ではストライクゾーンは一つしかない。左打者だろうが右打者だろうが、打者が打席の前に立とうが後ろに立とうが同じだ。ルールブック通り、ホームプレートの上を通過したボールがストライクだ。
しかし、メジャーは違う。
打者の内角をしっかりとるのが基本で、審判のボールを見るポジションも、内角が良く見える位置が基準だ。こうすると、外角はどうしてもアバウトになる。
右打者の場合はホームプレートの右サイドが甘くなり、左打者の場合は左サイドが甘くなる。打者によってストライクゾーンが違うのだ
これについて、93年にアメリカの審判学校に研修に行ったとき、ハリー・ウェンデルステッド校長が「インコースにアゴを置いて、一ヶ所だけ正確に判定できるようになればいいではないか。両方を正確にというのは無理で、あえてそうしようとすれば、大変な努力が必要だ。(日本の審判は完璧を求めたので)そのために30年は遅れた。両サイドを見ようと、身体をホームプレートの真ん中に置いて見れば、今度は両サイドがアバウトになってしまうではないか」と言われた。
メジャーでは、内角さえ間違えなければ、外角は多少ばらつきがあってもいいとしている。メジャーではこのやり方で30年も前からやっている。審判は内角を間違わないように神経を集中するわけだ。
アメリカがこうしている理由は、打者の体格によると思う。
身体の大きなメジャー選手は、外角は多少のボールでも届く。ところが内角はその長い腕をたたまねばならず、苦手としている。このことから、インコースを正しく見ようとの発想になったのだろう。
日本では、内・外角の両方を正確に判定するため、従来は、審判はホームプレートの中心の真後ろに頭を置いてやってきた。現在はメジャー式に内角に構えるが、それでも外角はアバウトでいいと考えてはいない。それが日本人の性格だし、ファンからも支持していただけると思っている。
(プロ野球 審判だからわかることより引用)


今の2段モーションに関するいざこざは、「みなが納得するルールをつくるために必要なこと」といえるのか。今までがごまかしながらも納得してたルールで、今は世界で統一したルールに対応するために、とりあえずやっているという気が。そもそも明確な基準を審判・選手が理解しきれてないし、要領悪いし…。

日本のプロ野球の中の「審判」の存在って何なんだろう…と考えさせられる今日この頃。
posted by クラーク at 03:10 | Comment(3) | TrackBack(1) | 野球
この記事へのコメント
こんばんは。
コメントをありがとうございました。
↓の記事と合わせて拝読させていただきました。
今は野球を知ってる人も知らない人も迷ってる最中なのですね。
ところでメジャーが野球の世界基準なんでしょうか?
また知らない事があることに気付いてしまいました。
Posted by りあ at 2005年11月01日 19:06
偶然なのですが、私もこの本を先週図書館で借りて読みました。
やはり審判には審判の立場があり、今回の二段モーションに関しては、ルールに乗っ取ってと明言した以上、これだけ厳格にやらなければいけないんでしょうね。
しかし、裏返して言えば、今までがあまりにもルーズだったということ。
今後はルーズにならないように期待したいです。
Posted by キングあおぽん at 2005年11月01日 22:43
>りあさま
こんばんは。
底辺の広さなど、メジャーの方が上回っていることは多々ありますが、
だからといって、世界基準なのかというと、
自分はう〜んと思ってしまいます。
いろいろな見方はあると思いますが…

>キングあおぽんさま
ファンのため、選手のためという考えに甘えて、
ルーズになっていたように感じました。
やるからにはきっちりやってもらいたいと思います。
それを行なうだけの権威が、今の日本の審判にあるのかな…と思いますが。
Posted by クラーク at 2005年11月02日 00:33
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「歪んだ日本基準」
Excerpt: 審判VS投手の泥試合が開始という記事にこんなコメントが。 返事書いていったら例にもれず長文になってしまったので 別記事にしてアップ
Weblog: 肉球を太陽に
Tracked: 2005-11-01 04:45
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